貧困が差別がうむ森林破壊

掲載日:2000年6月12日


(6月6日)
ランジット・デブラジ著
【ニューデリーIPS】

 国連の新しい調査によると、インドの貧しい田舎では、近年、高騰している燃料に代えて食事を薪で作るようになったため、森林が消滅しつつある。国連人口基金(UNFPA)インド事務所が、世界環境デーの6月5日に発表したインドに関する報告書「人口と森林」によれば、都市部でさえ、貧困層は調理のために再び安価な薪を使わざるを得なくなっている。薪は今や、地方では4分の3以上、都市部でも3分の1近くの家庭の台所で使われている。最近、政府が補助金を切り下げた結果、調理用のガスや灯油価格が値上がりし、インドの森林に対する圧力が高まりそうだと、報告書は指摘する。

 12年に及ぶ「国家森林政策」の目標は、少なくとも国土の3分の1を緑で覆うというものだったが、環境・森林省の1999年の調査では、森林はインド国土の5分の1以下しかないという。報告書によると、森林化計画が成功をおさめているのは、インド25州のうちわずか数州に過ぎないという。しかも森林が増加している一部地域でも、樹木の質は低下していると、報告書は指摘している。西部のマハラシュトラ州では、89年〜97年にかけて森林の面積は5%増加したけれど、同じ時期に良質な森林が大規模に消滅したという。

 「森林の減少による影響はたくさんある。例えば土壌の侵食、水不足、小規模な森林の生産物に依存している人々の生活破綻の増大などである」と、UNFPAインド代表のマイケル・ヴラソフ氏は言う。「森林破壊の悲惨な側面は、社会の貧困層や、伝統的な村落経済の一環として薪、家畜の飼料、森林の産物などを集めてこねばならない女性たちに対する圧力増加となって現れる」と、報告書は言う。インドのいくつかの地方では、女性たちは薪を捜すのに5時間もの時間を費やしているという報告は、枚挙にいとまがない。クリーンな調理用燃料から薪に逆戻りすることによって、女性や少女たちは屋内の空気汚染や微粒子の増加に伴う健康面の危険にもさらされることになる。

 報告書の序文でヴラソフ氏は「真に持続可能な発展のために、人口増加の抑制に加えて、理性的で人道的な森林の管理」を要請している。報告書は、インドが世界の人口の16%、家畜の15%を抱えながら、森林のわずか1・7%しかない事実に懸念を表明している。

 約2億3500万立方メートルという年間の薪消費量は、樹木の自己再生速度が遠く及ばないために、森林の大きな脅威になっている、とUNFPAの報告書は指摘する。試算によると、インドの森林が薪として提供できるのは、年間4800万立方メートルまでだという。

 産業用の森林伐採の増加や家畜が樹木を食用とすることも、脅威となっている。産業用の材木は、年間の生産力が1200万立方メートルしかないのに、産業界からは約2800万立方メートルの需要がある。インドの森林が養える家畜の数は3100万頭と見積もられているのに、家畜数は半世紀前の2億2800万頭から92年には3億3600万頭に増えている。

 「人口の増加、そして貧困と同時に生活様式の変化が森林の脅威となっている」と、報告書の主要な執筆者の一人、経済成長研究所のS・C・グラティ氏は言う。田舎の貧困層が薪を求めて森林に戻っていく一方で、都市部の人々の料理の嗜好の変化が更なる圧力となっている。都市における家畜消費の増加は、飼料などへの需要増加につながる。

 インドの人口は最近、10億人を突破し、2050年までは増加を続けると予測されているが、UNFPAの報告書は必要な森林の産品や森林面積が将来的に確保できるかどうかについては悲観的である。

 UNFPAによると、報告書は、人口増加に関連した乱伐と対比させることによって、インドの森林資源の減少に一般の人々の注意を喚起しようとしたという。「人口計画と森林保護の総合的計画という両方の側面で、努力を倍加させることが、今こそ必要である」と、報告書は結論づけている。

 報告書は「過度の開発、家畜飼料としての過剰な樹木の消費、不法な侵食、持続不可能な開発行為、森林火災、そして森林における見境のない開発計画」を正面きって非難している。東部国境地帯の西ベンガル州の少なくとも3分の1、そして北東部のマニプール州の99%を占める森林地帯は、森林火災を被りがちだという。